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カバー先とは何の事ですか??

カバー先とは、FX業者へレートを提示している金融機関の事を指します。FX業者は常に銀行や証券会社などから為替レートの値を受け取っていて、その値をもとにして顧客に向けてほぼ同様のレートを提示しています。(カバー先のレートが、FX業者の為替レートの基礎になっているのです。)

「ほぼ同様のレート」と書いたのは全く同じレートではないからです。この時のレートは、FX業者が少し得をするようなレートになっています。

例えば、カバー先から「1ドル=100.00円 で買える」というレートを提示されたら、FX業者が顧客へ提示する時には「1ドル=100.00円 +αで買える」というレートになります。

+αの部分はFX業者の都合によって変化しますので、時には0の場合もあるでしょうが、これによって多少の差額が生じます。そして、この差額分がFX業者の収益となります。

カバー先

+αの部分を大きくすればするほどFX業者の利益も比例して大きくなりますが、顧客にとってはより不利なレートになります。

よって、+αをあまりに大きくしすぎると顧客は別のFX業者へと離れて行ってしまいます。そのため、FX業者は顧客離れが起こらない程度に、なおかつ十分な利益が出るように+αの値を調整しているのです。

カバー先の重要性

FX取引を行う際の通常の流れは、

 顧客がFX業者の提示したレートを見て注文を行う
⇒FX業者はその注文を受けてカバー先へ注文を出す

となります。
しかし、そこにはどうしてもタイムラグが発生するので、レートが急変した場合などにはカバーできない可能性もあります。

例えば、顧客がFX業者の提示したレートを見て
「1ドル=100.00円 で買う」という注文を出したとします。

しかし、そのあとすぐにレートが急変して
「1ドル=100.10円」になったとしたら、
FX業者としては「1ドル=100.00円」でカバーしたいところが、
「1ドル=100.10円」でしかカバーできなくなってしまいます。

注文をカバーできていれば流すだけですが、カバーできなかった場合はそうはいきません。FX業者が顧客からの注文のカバーできなかった場合は、発生する損を自分たちで穴埋めしなければなりません。

この場合、顧客からは「1ドル=100.00円 で買う」という注文を受けて、カバー先へは「1ドル=100.10円 で買う」という注文を出しているので、100.10 - 100.00 = 0.10円 がFX業者の損失となってしまいます。

カバー先

FX業者にもそれなりの資本力はありますので、ある程度の支払いであれば応じる事はできますが、このように発生する損があまりに大きくなりすぎると問題になります。(場合によっては、これが原因で倒産してしまう可能性もあります。)

よって、このようなリスクを避けるためにFX業者は、

(1) 顧客からの注文を速やかにカバー先へとまわす
(2) カバー先との連携を強める
(3) カバー先を複数用意する

などの対策を取る必要がありますが、この中でも、特に大事なのは(3)カバー先を複数用意することです。

カバー先の量は多いに越したことはありません

一般的にFX業者は複数のカバー先を持っています。もしひとつのカバー先しか持っていなかった場合、そのカバー先に何らかのトラブルが発生すると取引ができなくなってしまうからです。

複数のカバー先を持っていれば、その中のひとつに問題が生じたとしても取引は続行できます。カバー先が多ければ、為替相場が大きく動いた時でも安定して顧客からの注文のカバーを取りやすくなります。

また、カバー先が多いとより有利なレートを提示する事ができます。

例えば、
カバー先Aが 1ドル=100.00円 で買える
カバー先Bが 1ドル=99.99円 で買える
カバー先Cが 1ドル=99.98円 で買える

というレートを同時に提示したとします。
この場合、FX業者はどのカバー先のレートを使用するかを選ぶ事ができます。

カバー先Cが提示した 1ドル=99.98円 で買えるというレートを顧客へ提供すれば、他社よりも有利なレートにすることができます。他社より優れたレートを提供し続けていけば、より多くの顧客を獲得する事ができるので、それだけFX業者の収益も伸びます。顧客にとっても業者にとっても良い話です。

その他にも、カバー先によって得手不得手な通貨ペアやスワップレートなどがありますので、多種多様なカバー先があれば、互いに互いを補い合ってどんな注文にも応える事ができます。それぞれのカバー先から良い部分だけを取り出してレートを提示する事ができるので、カバー先は多ければ多いほど良いでしょう。

ただし、必ずしもより数が多い方が優れているとは限りません。カバー先の組み合わせ次第で提示できる通貨ペア・レートは変化します。提示できる通貨ペアの数を増やすのであれば、同じ性質のカバー先を組み合わせよりも、違う性質のカバー先を組み合わせた方が効果的です。

しかし、同じ性質のカバー先を組み合わせでも、それを突き詰める事で、一部の通貨ペアに特化させることもできます。また、粗悪なカバー先を複数持っていたというような場合にはあまり期待はできません。

このようなことから、一概に何箇所以上のカバー先があれば安心であるとは断定できませんが、レートの安定性に関して言えば、3箇所以上用意してあれば期待して良いのではないかと思われます。

カバー先の質

カバー先の量と同様に、カバー先の質も高いに越したことはありません。カバー先の質が高ければ、カバー先の量が多い時と同じようなメリットがあります。

しかし、カバー先の質を把握する事はそう簡単ではありません
前述したとおり、一般的にFX業者は複数のカバー先を持っています。提示されているレートは、全体のカバー先の能力であって単体のカバー先の能力ではありません。

そのため、ひとつのカバー先について解析する事が非常に難しいのです。カバー先の質に関して言及する事は難しいので、とりあえずは量を重視して考えればよいでしょう。

くりっく365のランド円暴落事件

カバー先に関する問題で、くりっく365のランド円暴落事件というものがありました。サブプライムショックほどではありませんが、多くの投資家が損害を被った有名な事件です。以下は、この問題について詳しく説明して行きます。

2009年10日30日 (土) 4時59分33秒、取引終了直前に「くりっく365」市場における南アフリカランド/日本円のレートが一瞬で30%も下落しました。

※くりっく365とは、東京金融取引所が運営している外国為替証拠金取引のことです。民間のFX業者よりも高い手数料を取る代わりに、損益に掛かる税率がより有利になるという特徴を持っています。

発覚当初、この事態の原因は公表されていませんでしたが、後にカバー先が原因であると判明しました。その時のカバー先が以下の5社です。

・ ゴールドマン・サックス証券
・ ドイチェ・バンク・アクチエンゲゼルシヤフト(ドイツ銀行)
・ コメルツバンク・アクツィエンゲゼルシャフト(コメルツ銀行)
・ 野村證券
・ 三菱東京UFJ銀行

くりっく365ではカバー先として上記の5社からレートを受けていました。そして、提示されたレートの中で最も有利となるレートを配信レートとして採用するようになっていました。

しかし、問題の発生した時間帯には、4社がランド円のレートを提示していない状態にありました。そのため、唯一提示されていた残りの1社のレートが、自動的にくりっく365のランド円のレートとして配信されました。

しかし、この時のレートは、買値が11円台、売値が8円台と、スプレッドが300以上離れたレートでした。ランド円の直前の値が11円台、通常のスプレッドが2〜3程度であることを考えると、どれほど異常な値であるかが分かると思います。

異常レートの配信によって、直前まで11円台で推移していたランド円のレートは一瞬で8円台に急落しました。なお、この時に異常なレートを配信していたのは、くりっく365のみでした。

国外はもちろん、国内の民間のFX業者でもこのような異常レートは配信されていませんでした。この異常レートが配信された翌週の11月02日に、東京金融取引所は次のような発表を行いました。

======原文引用======
2009年11月02日 マーケット 10月30日付の南アフリカランド/日本円取引について、10月30日付の南アフリカランド/日本円取引において、取引終了間際の4時59分についた値段は、その時点において、市場動向からマーケットメイカーが提示した市場レートであり、システム障害等によるものではありません。ご理解の程宜しくお願い致します。
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つまりこの発表で、東京金融取引所は南アフリカランド/日本円の異常レートを正当なレートであると認めたのです。

翌週の月曜の朝、くりっく365のランド円のレートには強制ロスカットによる売り注文が殺到していました。当然ですが、くりっく365のランド円のレートは急落しました。

その影響を受けて、一般のFX業者のランド円のレートまでもが急落しました。結局、くりっく365の異常レートが原因で、ランド円を所持していた全ての投資家が損失を被りました。

後にこの問題は訴訟沙汰にまで発展しました。通常の取引で損失が生じたのではなく、異常なレートで取引が成立してしまい、莫大な損失が生まれたのですから当然ですよね。

そして詳しい調査が行われた結果、この異常レートを配信していたのが、カバー先のひとつであるコメルツ銀行である事が判明しました。

これに関して東京金融取引所がコメルツ銀行に説明を求めたところ「過失やトラブルなどによるものではなく、銀行のシステムによって算出された正当なレートである。」という返答が返ってきましたが、なんとも信憑性に欠ける話です。

なお、くりっく365は一定の値幅を超える注文は異常値と判断して受け付けないシステムが備えられています。今回のケースに関しても、コメルツ銀行が提示したレートに対して受付拒否を30回も行いました。

しかし、コメルツ銀行側はそれら全てに対してキャンセルメッセージを出した上で、スプレッドが300以上離れた8円台のレートを配信しました。

また、くりっく365はシステムの他にも目視による異常レートのチェックを行っていますが、今回の騒動は取引終了の30秒前のことだったのでチェックをすり抜けてしまったと説明しています。

最終的にはコメルツ銀行に対して、300万円の罰金、再発防止の為の改善案の提出、数ヶ月の業務停止の処分が科せられました。

これによって東京金融取引所も当初の見解を変えて、損害を被った投資家に一応は補填の措置を取りました。しかし、それも条件付き、期限付き、なおかつ部分的なものであり、全員分の損失が補填されることはありませんでした。

今回の問題の要点をまとめると以下のようになります。

・ 異常レートが配信された時、4社は未配信、コメルツ銀行1社のみが配信した。

・ このレートは、くりっく365のシステムによって異常値と判断されて30回も拒否された。

・ コメルツ銀行は30回のレート拒否に対して、キャンセルメッセージを出したうえで、スプレッド300以上の8円台のレートを配信した。 

この問題の主な原因はコメルツ銀行にある事は間違いないのですが、その他にも異常レートが配信された時に4社が未配信となっていた点も気になります。

本来であれば、この4社もレートを提示していなければならず、もしもそうしていればこの問題は発生しなかったはずです。また、東京金融取引所の目視チェックの漏れや、日曜日の間に異常値と判断しなかった対応などにも非があると思います。

このような問題は頻発する事はありませんが、有名な金融機関がカバー先になっていても安心はできないということを証明した良い例となる事件だと思います。FX業者を選ぶ際には、最低でも複数のカバー先を備えているかどうか、という点に注意しましょう。


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